COCON KARASUMA
昭和13年竣工の旧丸紅ビルをリノベーションし、商業施設として生まれ変わった「COCON KARASUMA」。
建築設計は隈研吾氏で、施工は竹中工務店です。
旧丸紅ビルは日建建設の源流である設計事務所の長谷部竹腰建築設計事務所が手掛けた名建築として当時から京都のビジネス街の中心としてあり続けました。
過去と未来の「古今」、「古今東西」に賑わいを広げたいという願いを込めて「COCON」という名がつけられ、新たな価値を生み出すためにリノベーションという手段がとられたそうです。
外壁を覆っている緑色のファサードに描かれているのは江戸時代から続く唐紙の老舗に伝わる文様で、新しい要素である「ガラス」にプリントすることで、ここにも古今が。
京都の都市景観規制を考慮し、街路樹に合わせた緑色を採用し、色のないビル街の景観からの脱皮を図り、異彩を放っています。
昔の姿を知らずに烏丸通りを歩いていると、緑色のファサードばかりが目に入りますが、
囲うようにリノベーションされた壁面の奥には当時のままの姿を残したビルが建っています。
北側の壁面は写真のとおり、当時のままの姿を残していました。こちらもストックされていた既存のタイルによって補修されたそうです。
最近は見かけることのなくなった地面に置かれた室外機の列もレトロビルならでは。マニアにはたまらんですね。
南側も見てみましょう。
(↑上からの構図です)
このあたりは改装真っただ中で(7/22オープン!)、エリアが限られていましたが写真のように外壁を中に取り入れた構造になっているのです。
カフェも屋外にあるような雰囲気に寄せていますね。新エリアオープンが待ち遠しいです。
ビル内の赤みの強い床は、旧丸紅ビル当時のものです。HPを見てみると南洋産のイペ材を使用していることがわかりました。ひとつひとつ手作業で当時の面影のまま今に蘇らせ、新しいエリアにも同素材を採用したとか。
温かみのある柔らかい床ですが、当時はオフィスに使われていたそうで、忙しく歩き回る人々を支えてきたこの床。修繕のころにはかなり痛んでいただろうなあ、、。
床はところどころで経年数の違いが感じられ、ここで部屋が分かれていたのかな、ここは壁だったのかな、、、と想像を掻き立てられます。
階段もまた旧丸紅当時のもので、現在ではあまり見られなくなったモザイクタイル床です。
エックス[X]の形で続いていく階段、、、下の階と階段の斜面が一つの絵みたいでかっこいい、、、!
現在はそこまで通行人が多くないのでとても贅沢に感じます。
本建物を見学して、考えさせられたことは未来へのつなぎ方。
全体にインパクトのある「新しい空気」が漂いながらも、どこか「歴史の重み」を感じ取ることができるのは「時間」がつくりだした価値に重きを置き、細部の徹底的なこだわりから醸しだされる空気があるからだと思います。
今も昔も「烏丸」がビジネスの中心で、きっとそれは未来も変わらない中で、次の建築家がどのように内包し繋げていくのか、、、。
完成品として捉えるのではなく、今も昔も未来も、歴史の流脈を感じながら建築を楽しめた気がしたお散歩となりました。