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文椿ビルヂング

今週のクラップ散歩は[文椿ビルヂング]。

私事ではございますが、数年前に京都に越してきて知り合いもいない中、このビル内の美容室でのひと時が心のオアシスとなっていましたので私にとってとても思い入れのある場所でもあります。

何気なく通っていたこちらのビル。建物に注目してみるととっても面白い、、!

 

木造建築

石造りのように見えるこの見た目で木造建築。中に入ってみると、木の廊下に木の階段。
木造なのでもちろん柱もあります。
現在は敢えて当時の柱や梁を見せるようにリノベーションされていました。

束石はあるけど基礎は一体どこにあるんだ?
20cmほどある太い柱は今も力強く建物を支えています。
梁もまた、頼もしいほど力強い。100年もの間、この梁がたくさんの人々を支えてきたのか、、、とグッとくるほどです。

後から補強のために足されたであろう耐力壁もなかなかの古さ。当時も六角のナットなんだ~と素朴な疑問が浮かび、
ウィキペディアで調べてみるとボルトやナットの標準が定められたのは1770年代のこと。
文椿ビルヂングが建てられたのは1920年と言われていますので、図らずも六角レンチの長い歴史を知ることになりました。笑

当時の柱が見えるのはこちらの1本のみで、構造上残さざるをえない柱は一体どこに隠されているんだろう、、、?想像が膨らみます。

 

貼り方の工夫

おそらく建築当時のものではありませんが、床や壁の貼り方がとても素敵でした。


フロアごとに床板の貼り方を変えていたり、階段横の壁も正方形の板をピッタリはめたり。
同じ向きではベタっとなってしまうであろう空間も貼り方をかえるだけで立体感が生まれ、
漆喰の白壁の自然な凹凸に光が反射し、柔らかな光に包み込まれた心地よい空間となっていました。

個人的にはこのテラテラの床が好き。まさか漆塗り、、、?(多分違う)
写真からも伝わってくるように、定期的に丁寧に手入れされている床を見ると、このビルがどれだけ大切にされているかが伝わってきます。

 

 

モザイクタイル

さて、大正レトロ建築見学の醍醐味といえばタイル!
弊社建築士の言葉を借りると『過去のタイルは一期一会』
まさにその通り。見落としてしまっては二度と会えませんので張り切ってガン見します。

まずはエントランスのブルーのタイル。まるで水辺のような、ビー玉が連なっているかのような、透明感のあるモザイクタイルです。と思って近くにで見てみると、縁は黒く残り焼成された感が強く結構ワイルド。
やっぱり少し離れるとみずみずしい、、!えーなんでーー!(興奮)
黄色のタイルが交えているからか、光の反射がより美しく、まるで水辺のような揺らぎを感じました。

 

トイレは個室ごとにタイルの色分けをしていました。お手洗いエリアをタイルでくくることはあっても個室ごとに分ける発想はありませんでした。かわいい、、、。
(つい先日も京都近代美術館で、扉の軌跡に合わせてタイルの色を変えているのを発見して、感動したところです)

こういった遊び心が建築物への愛着へとつながっていきますよね。私もうこのトイレが大好きです。笑

 

ファサード

外観の規則正しく並んだレンガと銅板の飾りがレトロビル好きにはたまらないデザインですよね。本で調べてみると、1.2階窓の間の縦ラインは戦後に改造されたそう。確かにトップのくさり模様を見ると上書きされている感。。。どうしてこんな風にしてしまったのか、、。ちょっとショック。

気を取り直して、本ビルのチャームポイントのマンサード型の屋根にのる窓にご注目。
こういった窓は飾りのために設置されることが多いそう。
機能だけに固執せずに、飾りで屋根に窓をつけてしまうなんて遊びがあってこれまた素敵ですね。
劣化してグリーンがかった銅の窓飾りが窓の存在感を一層際立てています。

 

 

文椿ビルヂングの魅力

このビルの一番の魅力は、建物を守りながらも変化を恐れずに進化し続けている点です。
1920年に貿易会社として建てられてから、繊維問屋、アメリカ文化施設、、、と様々な用途に形を変え2004年に商業施設「文椿ビルヂング」として再生されました。

建築物を残すための手段として[保存]という消極的な守り方ではなく、積極的にビジネス的にも挑戦している姿が他のビルにはない「文椿ビルヂング」の魅力であると感じました。
その上で、敢えて構造体が見えるようにリノベーションを施し、それがエントランスに配置されているところをみると、
進化の中にもこれまでの歴史を大切にしたいという作り手のメッセージか込められているように感じます。

今回のクラップ散歩では、歴史を刻んだ古い建物を取り壊すのではなく、その良さを生かしたまま、さらに魅力的に刷新することの重要性を学びました。

新築やリフォームを、ジャンルや工法に縛られず幅広く手掛けています。
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