お店訪問インタビューvol.1 町家四川星月夜さま
「町家四川星月夜」さまは四条堀川南東の油小路通り沿い(仏光寺通上ル)にあります。外観は京町家のため一見和食・割烹のようなイメージですが、中は本格四川料理レストランです。
東京の有名中華レストランの料理長を努めてられていた遠藤シェフらお店のスタッフが、全国各地に出向かれて取り寄せる旬の食材を京町家空間で楽しめること、京都中心部には珍しく駐車場もあることから、遠方からもお客さまが来られます。(遠藤シェフの味を求めてはるばる東京から来られるかつての常連さんも。)料理はどれも色鮮やかで食欲をそそり、独特の香り・辛さ・甘みが次々と時間差で口の中に広がります。
左:格子に映える橙色の暖簾 右:敷地内駐車場
―本日は改装工事の際の思い出やご感想など、当時を思い出してもらいながらインタビューさせていただきました。「町家四川星月夜」の佐藤支配人、遠藤シェフ、お忙しい中ご協力いただき、誠にありがとうございます。
写真向かって左は佐藤支配人・右は遠藤シェフ
―まずは今回クラップにご依頼頂いたきっかけや、決め手になった出来事があれば教えていただけますか?
この案件に全力投球してくれそうな予感がしました。
クラップさんのホームページの中の町家改修の施工事例を見て、2014年末に電話をかけたのがきっかけでした。その時に店舗の設計デザインを担当してもらった中尾さんが対応してくれて、「町家の改修」という言葉にスイッチが入ったような(笑)、この案件に全力投球してくれそうな予感がしました。他社も比較検討しましたが、踏み込んだ対応をしてくれそうかというと…。クラップさんのホームページ拝見した時からの勘でしたが、今から思うとあの時の勘は間違ってなかったですね。
―初めてお会いしたのは、まだテナント契約できるか五分五分の状況の時でしたね。東京でお仕事をされながら京都で独立の準備をされていましたが、不安などはありませんでしたか?
設計・施工だけでなく、行政事前協議申請から資金計画のサポートまでしてくれたのは心強かったです。
2015年1月に現場の調査に来ていただいた時が初対面でした。ホームページからの連絡だけだったので少し不安もありましたが、実際にお会いして話を聞いてその不安は払拭されました。
テナントとして契約を勝ち取るまでは他業種とのコンペの状況だったのですが、仕事が決まる前段階からクラップさんとプレゼンへの打ち合わせを重ね、我々の熱い思いを反映した資料を作成してもらえました。
晴れて計画が進められるようになったものの、遠く離れた東京で仕事をしながらの京都での開業準備だったので、時間の制約がありました。そういう状況で、クラップさんは資金計画サポートからデザイン設計、行政事前協議申請、近隣対応、施工、竣工まで全てをカバーしてくれたので本当に心強く、助かりました。我々の希望を全て実現するためには計画が複雑になる部分もありましたが、町家改修の設計・施工に経験豊富なクラップさんにお願いすることができ、最後まで安心してお任せすることができました。
―そう言っていただけてうれしいです。施工時に心に残っていることなどありますか?
施主の希望と、設計としての見極め判断。クラップのあり方を象徴する対応。
お店の一等席になる庭側の座席スペースの確保、玄関廻りの見せ方が課題でした。ずいぶん無理を言い、それに対して知恵を絞って頂きましたが、一つには可能な構造補強とできない柱撤去の総合的判断、また、店舗として町家を活かすための知識・感性・経験から、より具体的な提案を頂きました。おかげで客席はとてもすっきりとした内観が得られると同時に、残した柱により町家の強度を保つことも実現できました。ポイントで的確なアドバイスを頂く中で、夢が形になっていくことに感動しました。
私たちの持つ課題に真摯に取り組んでいただいたことは、クラップさんのあり方を象徴しているように思います。できることには積極的にアイデアを出して取り組み、できないことは安請け合いしない。このような姿勢はプロフェッショナルとして感心させられました。
空間美と建物補強の両面を満たすには見極め判断の経験が必要
―施工後の感想など教えていただけますか?
補強を伴った改装工事で長持ちする町家に。
オーナー様との間にも入ってもらって工事範囲の調整をして頂いたおかげで十分な補強工事ができ、長持ちする町家になったと聞いた時の安堵感は忘れられません。
外観の雰囲気をそのままに、中華の要素を盛り込んだスタイリッシュな内装に加え、使い勝手のよい厨房を作ってくれました。また、京都の厳しい冬もお客様が快適に過ごしてもらえる床暖房も提案頂きました。床フローリングは無垢のカリン材で、中華の雰囲気に合う上品な色合いがとても気に入っています。細部に配慮の行き届いた町家に生まれ変わり大変満足していると共に、長く大切に使わせてもらいたいと思っています。かなり無理も言ったと思いますが、設計デザインの中尾さんの柔軟な対応に感謝しています。
床フローリングには赤みのあるカリンの無垢材を使用
―ありがとうございます。弊社スタッフの対応はいかがでしたか?
クラップの皆さんの人柄にも惹かれました。
クラップさんは社長さんをはじめ、社員の皆さんの人柄も素敵なんです。これも、クラップにお願いした大きな理由の一つですね。社長のキャラ、これが一番効いたかも(笑)!クラップの事務所はお店から近いので、今でもよく食べに来てくださるんですよ。中尾さんの対応の丁寧さや設計アイデアの豊富さ、引き出しが多いことも決め手のひとつです。松本さんは伝統工法に関する知識や、企画書の緻密さも素晴らしかったです。梶さんは、骨惜しみしない働きぶりがすごいですね。趣味で100キロマラソンをされると聞いて、そのパワフルさに納得です。
―最後に、今後のクラップに期待することなど、あれば教えてください。
京町家は時代の記憶。
我々東京から来たものから見ると、「京町家は時代の記憶」です。人々が生きて生活してきた匂いのする場所であり、木造の建物は今でも日々呼吸しています。クラップさんにはこれからも、人が集い語らい暮らす場所として、京町家を出来る限り後世に伝え残していってほしいと思います。
クラップの方々との打ち合わせ記録や当時のスケッチは、この店とともに私たちの宝物となりました。
―「町家四川星月夜」さまの案件は、私たちにとっても大きな財産となりました。本日はお忙しいところお時間をいただき、誠にありがとうございました。 (インタビュアー:クラップ松本)
【編集後記・こぼれ話】
インタビューの前にお昼のコース料理をいただきました。ここからは同行者(星月夜さんでの食事は初めて)の方の感想です。
一番印象に残っているのは、名物の「鶏肉の重慶とうがらし炒め」でした。素揚げした鶏肉を大量の唐辛子と炒めた、刺激的な辛さがたまらない四川の伝統料理です。カリッカリの鶏肉とにんにくがくせになります。香り付け用のとうがらしを思わず持って帰りたくなりました。炒め物にも使えるとのことで…でも、いやしんぼと思われたらどうしよう…と我慢しましたが、やっぱり貰えばよかった!!食べたときは辛い~!となるんですが、次の日にはもう食べたくなっているのです。不思議です。ただ辛いだけではなくて、香りが豊かで深みがありました。(お店ではすべての調味料が自家製とのこと。豊かな香りと味の深みは、そのこだわりから来るのですね。)
そんな深みのある辛さを堪能した後、次に来たのはエビマヨ。エビマヨと言っても普通のエビマヨではなくて、おっきなぷりっぷりっのエビにほんのり甘いソース。なんとソースにはキウイが使われているんです!辛さと甘さに翻弄される私たち。シェフ遠藤さんの手の中でコロコロ転がされます。
最後はジャージャー麺か麻婆豆腐丼が選べると聞いてどちらにしようか真剣に悩んでいたら、なんと小盛りで両方食べられるようにしてくださいました…!!う・・・うれしい。両方食べられることももちろんなんですが、私たちの会話を聞いてさりげない気遣いをしてくださるところがなによりうれしく感じたのでした。うれしい、おいしい、辛い!でもうまい。お腹いっぱい、でもまだ食べたい。
お店の方の優しい笑顔とおもてなしの接客に心が癒やされます。お料理の「感動的な」おいしさはもちろん、サービスにもとことんこだわる一流店の心遣いに、あなたも癒されること間違いなしです。
左から前菜、鶏肉の重慶とうがらし炒め、キウイソースのエビマヨ。
調味料の原料はお店でご覧頂けます。
「町家四川 星月夜」
京都市下京区油小路通仏光寺上ル風早町582
11:30~14:30(ラストオーダー14:00)
17:00~22:00(ラストオーダー21:00)
火曜日・不定休日あり
ホームページ: http://www.hoshitsukiyo.Kyoto.jp
Facebook: 町家四川-星月夜(オレンジの暖簾が目印です。)